処世術

私が経験した大企業:大企業に「安定」を求めるのは間違っている

私はちきりんさんというブロガーさんが好きでして、先日この方の『「自分メディア」はこう作る! 』という本を読みました。

この本では、過去のちきりんさんのブログ記事がいくつか紹介されているのですが、その中で、安定を求めて大企業に新卒入社するということがいかにリスクであるか・・・という記事が紹介されていまして、ものすごーく共感しました。

同時に、新卒で大企業に勤めていた頃の日々を思い出し、「確かに、あの企業に勤めていた2年間を別の経験に使っていたら、今はもっとラクに生きられていたかもしれない」と思いました。

ということで今回は、ちきりんさんの記事をきっかけに思い出された私の大企業の思い出を語っていきたいと思います。

これを見て、安易に「安定のために、まずは3年、大企業で働いてみよう!」と考える就活生が1人でも減ることを祈っております。

求む!「新しい何か」

私がいた会社では、偉い方々は常に「新しい何か」を求めていました。

新入社員として入ったばかりの頃は、仕事中に「たれみみさんなら、〇〇の件について何がいいと思う?」とか、「新入社員として、今のこの職場の△△についてどう思う?」とか、上長や上司によく意見を求められていました。

ベンチャーIT企業みたいな、社会に変革をもたらすようなイノベーションは求められてはいませんでしたが、

今の社内体制とか、仕事の進め方とか、定期でやっている企画の内容とか・・・、そんな「当たり前」すぎて陳腐化していることについて、メスを入れたいという希望が、会社の偉い人たちからヒシヒシと伝わってきました。

でも責任は取りたくありません

ある日のこと。

私は、とある定期企画の責任者になりました。

その企画の責任者になるにあたって、上司や先輩の希望やアドバイスを聴きながら、現場を見たり、業者さんのお話も聞いたり、予算表と睨めっこしたりして「よし、こんな感じにしよう!」と方向性を定め、改めて上司に話をしたのですが

「これ必要?」

「昨年の実績は?」

「失敗しない?」

「知らんで俺」

と矢継ぎ早にプレッシャーの言葉をかけられ、突き放すような言葉もかけられてしまいました。

ちなみに当時の私は2年目。平社員で、決裁権も持っていないので、こんなことを言われては企画を実行に移すことはできません。

結局、昨年と全く同じ企画をまたやることになりました。

ちなみに、その企画は、一昨年のパクり企画でした。(もしかすると、更にまた前年のパクり企画だったのかもしれません。)

結局、上司の「俺の任期に失敗したくない」という意識が強いがために、新しい企画ができないんですね・・・。

でも「新しい」っぽい感じは欲しい

というわけで、前年とほっっっっっとんど同じ企画で準備が始まりました。

違うのは開催期間くらいで、それ以外は、企画内容も業者さんも予算感も全て同じでした。

業者さんとのお話も、めちゃくちゃスムーズに進みました。だって前もやったから。

しかし、「結局毎年同じことをしている」・・・という後ろめたさは上司にあったんだと思います。

だから、なんとかして「新しさ」を出したがるのです。

でも、前年と同じ企画内容なのに、どうやって「新しさ」を出すのでしょうか?

解決策→デザイナーに丸投げっ♪

同じ企画だけど、新しさを出したい。どうしよう・・・

こんなの簡単です。

企画のメインイメージを作って下さるグラフィックデザイナーさんに丸投げすればいいんです。

でも、前年とやることは同じなのに、なんて注文しよう・・・

こんなの簡単です。

「前年とちょっと雰囲気を変えて下さい」

「お祭り感を出して下さい」

「楽しい感じを出して下さい」

と注文すればいいんです。

すると、素晴らしいデザインが出来上がります。

企画内容は過去と同じなのに、すごくフワッとした注文なのに、どうしてこんな素敵なデザインがポンとできるんだろう・・・!

私はこの時、デザイナーってマジ優秀だなぁって、心底思いました。

(ちなみに、この経験が後にWebデザイナーになるきっかけになりました。)

デザインの良し悪しは個人の好み次第

私は、あんな注文の仕方でこんなデザインがすぐにできるなんて、凄いなぁ〜と思っていたし、そもそも企画にテーマもクソも何もなかったので、第1稿のデザインでも即OKだと思っていました。

しかし、このデザインを見た上司は一言「なんか違う」

お局先輩も「なんかねぇ〜」

私はデザイナーさんに修正の注文をしなくちゃいけないので、具体的にどこがダメなのか聞くんですが、結局、具体的な意見は何も引き出せませんでした。

だから、あと何案か出して下さいとお願いして、そこからデザインを選ばせました。(最後まで納得していない様子だったけどね。)

なぜこんなことになってしまうのか?

それは、企画が全く練られていないが故に、デザインの良し悪しの基準が無く、従って、個人の好みでしかデザインを判断するしか方法がないからです。

でも多分、上司はそれを理解していませんでした。

デザインは100%デザイナーのセンスで出来るものだと思い込んでいたので「依頼する側が企画を練らなくても、デザインなんかチャチャっとできるでしょ」って思っていたんだと思います。

んで、デザインは100%デザイナーのセンスでできるものだと思い込んでいるからこそ、デザインの出来上がりが自分好みじゃないと「このデザイナーはセンスが無い」とかほざき出すんですね。

結果は可もなく不可もなく(ですよね〜)

こうして出来上がった企画!

上司やお局先輩をおだてるのに苦労して出来上がった企画!

結果は、可もなく不可もなく・・・でした。(ですよね〜)

まあ、企画は企画だし、優秀なデザイナーさんと業者さんのお陰でお祭り感は出たけれど、「新しさ」があったのかは甚だ疑問という結果に落ち着きました。

まあ、上司は今年も「企画を成功させた」わけですから、良かったんでしょうけれどね。

【結論】社会人としての成長?ねぇよ。笑

身につくスキルは「忖度力」と「社畜力」

というわけで、以上、大企業時代の数あるエピソードの中の一つを紹介しました。

数あるエピソードの中の一つと言っても、実際、毎回こんな感じでした。

つまり、私はこの会社で、何かをちゃんと練ってPDCAを回したことなんて殆ど無くて、毎回、前年の企画を丸パクリして、最後はデザイナーに丸投げ・・・みたいな仕事の繰り返しでした。

「そんな仕事しかしていないなら、毎日暇じゃん」

って思う方もいるかもしれませんが、上司が無能で都合のいい時だけ「うつ病(自称)」を発症する人だったので、この人の尻拭い&その他自分の仕事でいつも忙しかった思い出です。

さて、ここまで読んでみて、これら一連の仕事を通して何の力が付くと思いますか?

「まずは3年」とかよく言いますけれど、こんな仕事を3年続けて、3年間で何が身につくと思いますか?

私がこの企業にいた2年半の間で身についたのは、「社畜力」と「忖度力」の2つだけだったと思います。

上司の機嫌を損ねることなく、お局社員の機嫌を損ねることなく、当たり障りなく、失敗なく、仕事を進めていく能力。

この能力が活きてくるのは、この会社と、この会社みたいな気質の別の会社だけで、

一歩外に出たら全く(は言い過ぎかもしれないけれど)役に立たない、クソみたいな能力です。

こんな能力を、20代の、若くて、体力があって、頭がスポンジみたいに軟らかい、一番いい時期に習得させられるんです。

これって、ものすごくリスキーなことだと思いませんか。

よく色んな人が言っていることですが、20代で社会人としてのビジネスの基礎能力をつけて、30代で自分の得意分野を追求して、市場価値を高めて行って、独立する・・・これが、社会に出て「成功者」になるまでのざっくりとしたロードマップだと思うのですが

私がいたような、こーんな会社(元東証一部・現東証プライム上場大企業w)で、「社会人のビジネス基礎能力」なんて付きませんよ。笑

社畜になるためのマインドセットが行われるだけです。

大企業に「安定」を求めるのは間違っている

ニュースとか見てればわかることですが、最近って、技術革新が早いですし、コロナ禍を経て、働き方や人々の暮らしが益々多様化してきていて、

今までの正解が、これから先も正解である確証なんて全くない時代ですよね。(誰かの受け売りみたいな薄っぺらい言葉ですみません)

つまり、今まで「安定している」と思われていた大企業だって、これから先本当に安定して成長していける確証なんてないわけで、

だからこそ、自分で考えて、動いて、世渡りしていく力が必要になってくるわけですよね。

こうした前提のもとで考えてみると

「安定」や「社会人としての基礎能力」を求めて、大企業に貴重な20代の数年間を捧げるのは、間違っているとしか言いようがないと私は思うんですよね・・・。

ではではまた〜ノシ

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