京セラやKDDIの前身である第二電電を創業し、又、倒産したJALを再生へと導いた稲盛和夫氏。
稲盛氏が経営の根幹とみなしているのが会計であり、『稲盛和夫の実学』には稲盛氏が会社経営にて学んだ会計の根本的な考え方が綴られております。
この本を読んで感じたことは「健全な経営をするために必要なのは、実はすごく当たり前なことなんだなぁ」ってこと。
稲盛流の会計哲学について書かれた本ですが、公認会計士しか知らなそうな難しい用語はぜんぜん出てきません。
とにかく、シンプルだけどすっごく基本的なことが書かれていて、「これ、貯金の極意でもあるよね」と思いました。
という訳で今回は、『稲盛和夫の実学』の考え方2つを紹介しつつ、それがどう家計にも役立つのかって話をしていきます。
「なぜそれが必要なの?」:本質追及の原則
基本的な考え方
世の中には、どの業界にも「そういうものなんだから、そうするべきだ」という有無を言わさぬルールがありますよね。
本質追及の原則とは、こうした常識を見直し、本質的に対象を見極めるべきだという原則になります。
「ルールだから」「決まりだから」「そういうものだから」
こういう常識に従っていれば、色々と楽です。自分の責任で考えて判断する必要が無くなるし、周りと同じように振る舞っていれば、何かとやりやすい事もあります。
でも、常識について、「なぜ?」を繰り返して考えることができると、
例えば、「それって、現代には当てはまらなくね?」「今はスマホがあるんだから、必ずしも●●する必要なくね?」というような無駄への気づきや、ベターな選択肢が見えてくるかもしれません。
【家計】それは本当に必要な支出なの?
この原則は家計の無駄を省くのにも超重要な原則です。
多分高度経済成長期に出来た常識なんでしょうけれど、保険とかマイホームとかマイカーとか……
日本に住んでいると、「そこはお金を掛けるべき!」と一般化している出費項目がありますよね。
でも、それらって本当に必要なんでしょうか?
どうして必要なのでしょうか?
保険って、車って、マイホームって、そもそも何のために必要なのでしょうか?
その目的を達成するためには、必ず保険に加入するか、車・マイホームを購入する必要があるのでしょうか?
こういう風に、出費項目について根本的に考える事。そうすることによって、無駄な出費を防ぐことができますし、より良い選択肢も見えてくるようになります。
一対一対応の原則
基本的な考え方
これは、品物とお金が動けば、それらに対応して伝票が起票され、該当する品物とお金・伝票がワンセットで動いていくようにするというものです。
つまり、どんな取引をしたのか後からでも追えるような会計をリアルタイムで更新していくという原則です。
こうすると、後から個別の取引を追えるだけじゃなく、リアルタイムで手持ち金額がいくらあるのかを確認出来るようになります。
月末とか四半期ごとに経理さんが会計書類を纏めるのを待っていると、現時点での自社の状態が分からないですよね。
「使える予算は多分これくらい……だから、これくらいなら払えるっしょ……」といったどんぶり勘定になるのを防ぐのが、この一対一対応の原則です。
どんぶり勘定が始まると、そのうち不正会計が始まり、最後には倒産か身売りする他ないような、危機的な財政状況に陥ることとなります。
どんぶり勘定になるのは、現時点での財政状況が分からないからです。
だから、品物・お金と同じタイミングで伝票を起票し、リアルタイムで会計に反映させることで、そもそもどんぶり勘定をしない環境を作り出すのです。
【家計】何にいくら使ったのか追えない買い物は禁物
後から個別の取引を追えるだけじゃなく、リアルタイムで手持ち金額がいくらあるのかを確認出来るような会計をする――これは、家計管理でも重要な考え方ですね。
「〇〇銀行で口座を開設すると、5000ポイントもらえる!」
「××カードで払うと、5%お得になる!」
「リボ払いを選択すると、8000ポイントもらえる!」
一般利用者向けの金融って、今色んな「おトク!」に溢れていますよね。
この「おトク!」を最大限に享受しようと、
この店ではAカード、あの店ではBカード、こっちの店ではCカードを使って、あっちの店ではDカードで支払って……
とこんな風に、沢山のカードを場所によって使い分けている方、割と多いと思います。
過去に付き合っていた彼氏がこういうタイプでした。「〇〇カードはここで使うとこんなにお得で……」と実況しながら会計していましたが、ヤツは常に金欠でした。(苦笑)
不思議ですよね。そもそも「おトク!」だから、沢山のカードを使い分けていたのに、元カレはどうして金欠になってしまうのでしょうか?
それは、今の手持ち金額を把握しきれなくなってしまったからです。
確かにポイント還元とか割引もあって、その瞬間は「おトク!」なのかもしれませんが、月にそれぞれのカードでいくら遣っているか、それらのお金はどの銀行から、いつ支払うのか、明確に把握できなくなることで、
やっと給料が入ったと思ったら、いつの間にかお金が無くなっている!という状況に陥ってしまっていたのです。
「給料日だやったー」
→Aカード代が引かれる
→Bカード代が引かれる
→Cカード代が引かれる
→●●のリボ代金が引かれる
「うわ!今月もう1万円しかない!!」
~金欠の日々~
「給料日だやったー」
このループです。
因みに、その元カレは、ある時からサラ金にお世話になり始め、別れる頃にはサラ金4社から計120万円借金しておりました。
管理出来ているなら良いのですが、管理しきれていないのに複数カードを持っていて、どのカードに次いくら払うのか分からないというのは、サラ金への入り口になります。
- 複数カードを持っている
- 複数口座を持っている
- それぞれのカード・口座で、いつ、何の名目(日常遣い・家族行事用・仕事用)でいくら支払うのか把握していない
- 毎月、気が付くとお金が無くなっている
- そういえばリボ払いしている
こんな方は、借金地獄にハマる前に、一度カード・口座の断捨離をした方がいいと思います。
それか、もしお持ちでなければデビットカードを持つようにするとか。
デビットカードなら会計した瞬間銀行口座から直接引き落とされ、いくら引き落としたかがメールで通知され、アプリですぐに残金を確認出来ますから、これなら頑張らなくても『一対一対応の原則』を家庭でも実現できます。